化学反応が起こるときには、反応物が周囲の熱を吸収したり、逆に周囲に向けて熱を放つ可能性があります。化学反応と周囲の空気との間の熱交換は、反応エンタルピーまたはHとして知られています。しかしながら、Hは直接測定することはできません。その代わりに、科学者は時間の経過と共に変わるエンタルピーの「変化」( ∆H と表されます)を知るために、反応中に時間の経過と共に変わる温度の「変化」を利用します。∆Hによって、科学者は反応により熱が出ている(発熱反応)のか、熱が吸収されている(吸熱反応)のかを推定します。一般的に、エンタルピーの変化を求める式は ∆H = m x s x ∆T と表されます。mは反応物質の質量、sは生成物の比熱、∆Tは反応により生じた温度変化です。

方法 1 の 3:
エンタルピーの問題を解く

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    反応に関わる生成物と反応物質を決める あらゆる化学反応には2種類の化学物質が関係しています。それは生成物と反応物質です。生成物は反応によって「作り出された」化学物質です。一方で、反応物質は生成物を作るために「相互に作用、化合、または分解」する化学物質です。言い換えれば、化学反応における反応物質は、料理のレシピにおける材料のようなものです。一方で、生成物は完成した料理のようなものです。化学反応の∆Hを求めるために、まずは生成物と反応物質がそれぞれ何かを確認しましょう。
    • 例として、水素と酸素から水が生成する反応エンタルピーを求めてみましょう。2H2 (水素) + O2 (酸素) → 2H2O (水)この反応式では、 H2O2 が反応物質であり、H2O が生成物です。
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    反応物質の質量の合計を決める 次に、反応物質の質量を求めましょう。質量がわからず、化学てんびんで質量を量ることができない場合、実際の質量を求めるためにモル質量を利用することもできます。モル質量は定数です。個々の元素のモル質量は周期表から、分子や化合物のモル質量は様々な化学の資料から求めることができます。反応物質の質量を求めるために、それぞれの反応物質のモル質量にモル数をそのまま掛けましょう。
    • 今回の水の例において、反応物質は気体の水素と酸素です。それぞれモル質量は2gと32gです。反応式中でH2の隣に係数「2」がありO2の隣には係数がないので、水素2モルと酸素1モルが使われています。よって、反応物質の質量の合計は次のように計算できます。
      2 × (2g) + 1 × (32g) = 4g + 32g = 36g
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    生成物の比熱を求める 次に、計算する生成物の比熱を求めましょう。元素や分子にはそれぞれ決まった比熱があります。比熱は定数であり、その値はたいていの化学の資料(たとえば、化学の教科書の巻末の表など)に載っています。比熱の測定方法には様々なものがありますが、今回は、単位としてJ/(g ・K)を使います。
    • 反応式に複数の生成物がある場合は、次のことに注意しましょう。生成物ごとに成分反応のエンタルピー計算をする必要があります。その後、計算で求めたそれぞれの値を足して、反応全体のエンタルピーを求めます。
    • 今回の例では、最終的な生成物は水です。比熱は約4.2 J/(g ・K)です。
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    反応後の温度差を求める 次に、∆T、すなわち反応前と反応後の温度差を求めましょう。この値を計算するために反応後の温度(T2)から反応前の温度(T1)を引きましょう。化学の問題では頻出する単位ですが、ここでも温度の単位はケルビン(K)を使います。(ちなみに、セルシウス度°Cで計算しても同じ結果が得られます。)
    • 今回の例では、反応直前に185Kだった温度が反応終了時に95Kに冷却されたとします。この場合、∆Tは次のように計算されます。
      ∆T = T2 – T1 = 95K – 185K = -90K
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    問題を解くために公式 ∆H = m x s x ∆Tを使う m(反応物質の質量)、s(生成物の比熱)、 ∆T(反応により生じた温度差)の3つの値がそろえば、反応エンタルピーを求める準備が整いました。公式∆H = m x s x ∆Tに3つの値をそのまま当てはめて、掛けましょう。答えの単位はジュール(J)を使います。
    • 今回の例では、反応エンタルピーは次のように求まります。
      ∆H =(36g)× (4.2 J/(g ・K)) × (-90K ) = -13,608 J
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    反応がエネルギーを得たのか、失ったのかを明らかにする 化学反応の様々な場面で∆Hを計算する大きな理由は、発熱反応(エネルギーを放出して失う)か吸熱反応(エネルギーを吸収して得る)かを明らかにすることにあります。最終的に求めた∆Hの符号がプラスであれば吸熱反応です。一方で、符号がマイナスであれば、発熱反応です。数値が大きくなるほど発熱もしくは吸熱の反応の度合いが大きくなります。激しい発熱反応の時には注意しましょう。この反応は時として大きなエネルギー放出を表している可能性があります。急速にこの反応が進むと、爆発を引き起こす可能性があります。
    • 今回の例では、最終的な答えが-13608 Jです。マイナスの符号なので、反応は発熱していることがわかります。H2 とO2は気体で、生成物のH2Oは液体の状態です。(水蒸気の形の)熱い気体を液体の水の状態になるまで冷やすためには、大気中に熱エネルギーを放出しなければなりません。このため、 H2Oの生成は発熱反応であることがわかります。
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方法 2 の 3:
エンタルピーを推定する

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    エンタルピーを推定するために結合エネルギーを利用する ほとんどすべての化学反応には、原子間の結合と分離が関わっています。化学反応において、エネルギーがなくなったり、新しく生み出されることはありません。それゆえ、反応中に結合の形成や分離が生じる時に要するエネルギーの量を知っていれば、結合エネルギーの数値を合計することで、反応全体のエンタルピーの変化を高い精度で推定することができます。
    • たとえば、H2 + F2 → 2HFという反応を考えてみましょう。この場合、H2分子がH原子に分離するために要するエネルギーは436 kJ/molです。同様に、F2がF原子になるために要するエネルギーは158 kJ/molです。[1] 最終的に、HとFが結合してHFになる時に必要なエネルギーは-568 kJ/molです。[2] 反応式中の生成物は「2」HFなのでこのエネルギーの数値を2倍して次のようになります。2 × -568 = -1136 kJ/mol。得られた数値をすべて足すと、エンタルピーの変化がわかります。
      436 + 158 + -1136 = -542 kJ/mol
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    エンタルピーを推定するために生成エンタルピーを利用する 生成エンタルピーは、一定の化学物質を作るために使われる反応エンタルピーの変化を表す∆Hの値です。反応式中の生成物と反応物質を作る時に必要な生成エンタルピーがわかれば、上に述べた結合エネルギーによる計算と同様の方法で、エンタルピーを推定することができます。
    • たとえば、C2H5OH + 3O2 → 2CO2 + 3H2Oの反応を考えてみましょう。今回は、次のような生成エンタルピーを表す反応式が与えられています。[3]
      C2H5OH → 2C + 3H2 + 0.5O2 = 228 kJ/mol
      2C + 2O2 → 2CO2 = -394 × 2 = -788 kJ/mol
      3H2 + 1.5 O2 → 3H2O = -286 × 3 = -858 kJ/mol
      これらの反応式を合算すると、今回求めるべきエンタルピーを表す反応式、すなわちC2H5OH + 3O2 → 2CO2 + 3H2Oを得ることができます。よって、この反応のエンタルピーは、次のように、上の生成エンタルピーの値をそのまま足すと導かれます。
      228 + -788 + -858 = -1418 kJ/mol
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    反応式を反対にする時は符号を忘れずに変える 反応エンタルピーを計算するために生成エンタルピーを利用する場合、次のことに注意しましょう。成分反応の式を逆にする時には、必ず生成エンタルピーの符号も逆にする必要があります。換言すれば、生成物と反応物質を適切に消すために、いくつかの生成反応式を逆にする必要がある場合、向きを変える生成エンタルピーの符号を逆にする必要があります。
    • 上の例では、C2H5OHの生成反応が逆であることに注意しましょう。C2H5OH → 2C + 3H2 + 0.5O2はC2H5OHの分解を表しており、生成ではありません。生成物と反応物質を適切に消すために反応式を変えたため、符号を逆にした生成エンタルピーの値は228 kJ/molになりました。実際に、C2H5OHの生成エンタルピーは-228 kJ/molです。
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方法 3 の 3:
実験をしてエンタルピーの変化を観察する

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    きれいな容器を準備し、水を満たす 単純な実験を行ってエンタルピーの原理を簡単に観察できます。実験中に異物による汚染を完全に防ぐために、使用する容器は洗浄と殺菌をしましょう。科学者はエンタルピーの測定にカロリーメーターと呼ばれる特別な密閉容器を使います。しかし、小さいガラス製の広口瓶やフラスコを使っても信頼性のある数値を得ることができます。どんな容器でもかまわないので、きれいな常温の水道水で容器を満たしましょう。また、涼しい屋内で実験を行う必要があります。
    • この実験のために、かなり小さい容器が一つ必要になります。水に溶かした重炭酸タブレットのエンタルピー変化を調べるため、水の使用量が少ないほど、温度が顕著に変化します。
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    容器の中に温度計を入れる 温度計を準備し、先端の液だめが水中に来るように容器内に取り付け、水温を読み取りましょう。ここでの水温は反応前の温度、すなわちT1を表しています。
    • 水の温度を測り、目盛りがちょうど10℃だったという例を考えてみます。エンタルピーの原理を実際に確かめるために、実験の中でこのような試料温度の読み取りを何回か繰り返します。
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    容器に重炭酸タブレットを加える 実験の準備が整ったら、重炭酸タブレット1錠を水の中に入れます。すぐにシューッという音とともに泡が発生します。錠剤が水に溶けるにつれて重炭酸塩(HCO3-)とクエン酸(水素イオンH+の形で反応します)に分解されます。この化学物質は次のような反応をして水と二酸化炭素ガスに形を変えます。3HCO3 + 3H+ → 3H2O + 3CO2
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    反応が終わってから温度を測る 反応の様子を絶えず注意して観察しましょう。重炭酸タブレットは徐々に溶けていきます。タブレットが溶け終わったら(もしくは反応が微小になったら)、もう一度温度を測りましょう。水の温度は反応前と比べてわずかに下がっているはずです。温度が上がっている場合、(たとえば、室温が異常に高いなどの)外部の要因が加わった可能性があります。
    • 今回の実験の例では、タブレットが溶け終わった後の水温が8℃になったとします。
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    反応エンタルピーを推定する 理想的な実験結果は次のようになります。重炭酸タブレットを水に加えた結果、タブレットは水と二酸化炭素ガスになり(二酸化炭素ガスはシューッという音と泡の形で観察できます)、水温が下がります。この結果から、吸熱反応が起こったと推測できます。換言すれば、周囲からエネルギーを吸収する反応が起きています。液体にものを溶かす反応は、気体生成物を発生させるために余分にエネルギーを必要とします。それゆえ、周囲にあるもの(この場合は、水です)から熱の形でエネルギーを奪います。その結果、水温は下がります。
    • 今回の実験の例では、重炭酸タブレットを加えた後、水温は2℃下がりました。この結果は、上で推測したところの穏やかな吸熱反応と一致します。
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ポイント

  • 計算ではケルビン(K)が使われます。ケルビンはセ氏温度のように温度を測るための尺度です。セ氏温度とケルビンの変換をするためには、273度を足す、もしくは、引くだけです。K = °C + 273

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