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大人社会すなわち実社会においては、さまざまな場面で適材適所の判断と対応が求められます。相手の言葉の裏を読むだけでなく自身も選ぶ、一手先を読む、臨機応変な対応を瞬時に判断するなど、いずれも公私を問わず、円滑なコミュニケーションに欠かせぬ対応です。しかしながらこれらが苦手かつ努力しても思うように改善できず、自身の居場所に窮している人は潜在的に少なくありません。こうした支障が生じる原因の1つとされているのが、脳の発達が先天的に偏っていることにより、自身の置かれた環境に上手く適応できない、大人の発達障害です。発達障害は治療による症状軽減や、環境調整などの工夫を講じることで、状況の改善が可能であり、当事者自身と周囲の人たちによる、正しい関連知識の共有が大切です。[1]

方法 1
方法 1 の 2:
大人の発達障害を理解する

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    ASD(自閉症スペクトラム障害)を知る 自閉症スペクトラム(ASD)とは、アスペルガー症候群、特定できない広汎性発達障害などを含む疾患の概念です。この疾患を先天的に有する人は一定数存在し、人口の1~2%とされており、日本ではその比率が3~5%とさらに高く、男性に多く見られるとされています。自閉症スペクトラムに該当する人には主に以下の症状(特徴)が見られますが、個人差が顕著であり、第三者には一個人の個性と映る場合も少なくありません。自閉症スペクトラムは個性として捉えることも大切であり、本人や周囲の人が円滑に日常生活を送れるよう、工夫をしながら対応することが求められます。[2]
    • コミュニケーション能力の障害が原因で、言葉のキャッチボールが苦手です。相手の言葉の裏を読むことが出来ず、すべての表現を真に受けてしまうため、雑談や歓談の輪の中に入れず、いわゆる「KY(空気読めない)」と囁かれた経験を持つ人も少なくありません。
    • 独自のこだわりが強すぎるため、全く関係のない一人語りを延々続けてしまう、思ったことをストレートにそのまま口にしてしまうなど、社会性の低下につながる言動に及んでしまう場面が見られます。
    • 想像力が乏しく、客観的に自信や周囲を捉えるのが不得手なため、臨機応変な対応が苦手です。
    • 関心事や興味の対象へのこだわりが顕著で、決まった通りに物事を進めなければ安心できず、同じ動作の繰り返しに没頭する傾向が見られます。
    • 触覚・聴覚・味覚・嗅覚などが著しく敏感もしくは鈍感なため、他人に触れられることを極端に嫌う、特定の人の話し声と周囲の雑音が区別できないなど、不快感を覚える場面が少なくありません。
    • 不器用で運動神経が鈍いため、仕事や日常生活上自力対応が求められる作業ができない人が見られます。
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    ADHD(注意欠如・多動性障害)を知る 注意欠陥多動性障害(ADHD)は、不注意・多動性・衝動性が著しい特徴の発達障害を指しています。7歳までに発症するとされており、幼稚園や学校生活上に先述の特徴的な行動が見られることで、ADHDである可能性が予測できます。発症した症状は短期間で消失しないため、集団生活を送る上での支障や困難が避けられない場面が散見されます。成人後も症状が持続するケースも見られ、男児に発症率が高いと報告されています。自閉症スペクトラムと混同されることもありますが、異なる発達障害として位置づけられており、具体的には以下の特徴が見られます。[3]
    • 不注意 集中力が極端に乏しいため、継続的に物事に取り組むことができません。直ぐに物事を投げ出してしまう、不真面目などと誤解されがちですが、当事者の理解力不足や反抗的態度によるものではありません。
    • 衝動的 次の展開が考えられず、思ったまま即行動に移してしまう傾向が見られます。興味を抱いた対象物に一直線に辿り着くべく道路に飛び出す、相手を思いやらず思ったことを言葉にして相手を傷つけてしまうなど、思慮が見当たらないと映る言動が目立ちます。
    • 多動性 じっとしていることができず、授業中着席し続けられず、教室内外をウロウロするなど、ルールに沿った行動に支障が見られます。症状が軽度の場合、極端に落ち着きのない人と映るため、小児期の発症時の症状が顕著ではない場合、周囲が気づかないケースもめずらしくありません。
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    LD(学習障害)を知る 学習障害(LD)とは、読み書きや計算力などに関する発達障害の1つです。その症状には個人差が見られるため、対象者それぞれに的確な診断と検査が求められ、各々の効力に応じた対応が必要です。高機能自閉症(ADHD)を伴う場合には、家庭と学校と医療機関の相互連携に基づく、当事者の症状と能力を深慮した学習支援が望まれます。人口に対する発症比率はアルファベット語圏で3~12%、日本では3.3%との調査結果が報告されていますが、日本語にはひらがな・カタカナ・漢字があり文字表記が複雑なため、正確なデータは見極められていません。ちなみに対象者の読み書きに関しては、以下の特徴が見られ、いずれも文章の意味を理解していないことの表れと言えます。[4]
    • 文字を1つずつ拾って細切れに読む、単語や文節の途中など、不自然な箇所で区切って読む、指で押さえて辿りながら読むなど、明らかに不自然な読み方が見られます。
    • 音読できない(知らない)文字は読み飛ばす、文末を勝手に変えて読んでしまうなど、適当な読み方が気になります。
    • 文字間が狭い文章の場合、読み誤りの頻度が高まり、行を飛ばしたり繰り返し頭に戻って読んでしまうなど、文章を目で追えなくなりがちです。
    • 音読みもしくは訓読みしかできない、「ょ」「っ」など特殊音節の読み書きを無視する、助詞の「は」「わ」や、形が類似した「め」「ぬ」の混同などが見られます。
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    アスペルガー症候群とASDとの関係性を理解する アスペルガー症候群とは、対人関係およびコミュニケーションの障害と、パターン化した興味や言動の症状が見られる発達障害です。一部では『発達障害=アスペルガー』と捉える向きも散見されるようですが、これは正しい解釈とは言えません。アスペルガー症候群は現在、国際的精神疾患の判断基準に基づき、自閉症スペクトラム障害(ASD)という疾患名に変更されています。『アスペルガー症候群=ASD』が、今日の正しい認識です。先に触れたASDの特徴以外にも、次に挙げるような特性が見られ、世間一般的に「アスペルガー症候群の特徴」として認識されています。[5]
    • 無表情・無感情で話し方に抑揚がなく、学者の論説のような難解な表現を好む傾向が見られ、ユーモアや皮肉などの「趣」を理解するのが極端に苦手です。
    • 相手と視線を合わすことを嫌い、幾度注意しても改善が見られず、失礼な人だと誤解されてしまいがちです。
    • 突出して優れた記憶力や集中力を有する人もあり、興味があることには延々と集中力を持続でき、特定の分野で突出した成果を挙げるケースも見られます。
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方法 2
方法 2 の 2:
具体的な改善方法を実践する

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    周囲の理解を得る 大人の発達障害は、たとえば視力や聴力あるいは四肢のそれとは違い、第三者が一目でそうであることを認識しづらいのが特徴です。そのために誤解が生じやすく、当事者の努力や苦しみが伝わらず、居場所に窮してしまう悪循環が懸念されます。しかしながら大人の発達障害に対する認識は、世の中に確実に浸透しつつあります。「社会人として不適格者」「能力不足」などの悲しいレッテルを貼られてしまう、理不尽なリスクは大きく軽減されています。症状を軽減させ、社会人として仕事を続けるべく、まずは臆することなく、周囲に自分の理解者とサポートしてくれる人を増やすことを心がけましょう。[6]
    • 家族だけでなく職場の上司に相談することで、発達障害に対する理解と協力をお願いしましょう。いわゆる組織内の特別待遇に相当する以上、一朝一夕で希望通りの配慮がなされるとは言えませんが、自身が苦手な作業や環境を理解してもらうことで、心身の負担の軽減が期待できます。
    • たとえば聴覚過敏の症状がある場合は、人の往来が少なく静かな部屋での勤務を希望する、耳栓の使用を認めてもらうなどが、具体的な相談と提案内容の一例です。勤務先側にも負担が少なく、自身の発達障害で生じる支障を排除もしくは軽減する、個別対応の支援すなわち『合理的配慮』を願い出てみましょう。
    • 発達障害による心身の負担を、健常者に理解してもらうことは簡単とは言えません。たとえば聴覚過敏の理解を求める場合、「固定電話の呼び出し音にも耳を塞いでしまう」「職場内に流れているBGMと同僚からの話しかけが混濁するほど、同じ音量で聞こえてしまい区別がつかない」など、より具体的に伝える姿勢で臨みましょう。
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    カウンセリングを受ける 大人の発達障害に悩む当事者は、誰もが大きなストレスと生きづらさ、そして「自分だけがどうしてこうなのだろう」といった自問自答と向き合い続けています。発達障害者という現実を自分1人だけで抱え続けるのではなく、専門家のカウンセリングを受けることで、自身の悩みを解消もしくは軽減が期待できます。またカウンセリングで行われる、当事者の物事の捉え方や行動の特徴を把握することで、客観的な考え方や行動を身につける認知行動療法も、有効とされる治療法の1つです。
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    薬物療法を行う 大人の発達障害の治療に際しては、情緒を安定させる目的で薬物の投与が行われることがあります。ただし症状や薬物療法で得られる効果には個人差が見られるため、主治医と十分に相談の上、慎重に実践しましょう。処方された薬物は服用に際しての指示を厳守し、早期改善効果を期待しての過剰な服用に及んではなりません。また僅かでも異変を感知した場合には、速やかに服用を中止し、主治医に報告する姿勢が求められます。[7]
    • 発達障害を有する人の中には、成長を通じた経験に基づき、次第に自分自身の特性を理解し、困った場合の対処法を徐々に理解し始める人も見られます。一旦は薬物治療を視野に入れつつ、結果的に実行せずに症状が軽減され、悩みが解決することもあります。
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    日常的に改善策を実践する 発達障害に起因する日常の困りごとは、改善策を講じることで一定の改善が期待できます。たとえば対人関係を少しでも円滑にしたいのであれば、相手が誤解するような言動を控え、好印象を届ける必要がありますが、発達障害に見られる特徴がそれを阻んでいる現状が見過ごせません。相手の目を見ない、無表情無反応、会話のキャッチボールが不得手(場違いな1人語りを延々続けてしまう)などが、代表的な特徴と言えるでしょう。自分の苦手な部分を正しく把握した上で、不足しているコミュニケーションスキルを補うことに努めましょう。
    • 相手の話を聞く時には、相手の目を見てうなずきながら聞く習慣を心がけましょう。
    • 発言する際には「自分の思うことを話してもいいですか」と、断りを入れた上で話し始めましょう。
    • 急に相手との距離感を詰め過ぎてしまったり、親し気な口調に及ばぬよう、相手に合わせることの大切さに注意を払いましょう。
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    自身の弱点を補う 多くの発達障害の人に共通して見られる弱点として、自己管理が苦手であることが挙げられます。特定の考え方へのこだわりが強すぎるあまり、いわゆる融通が利かず、作業効率が極端に悪いなど、仕事上の悪影響が避けられない傾向が見られます。自分なりの工夫を施すことで弱点を補い、無用な心身の負担を軽減することが、間接的に発達障害のデメリットを抑える効果にもつながります。
    • 口頭での作業指示あるいは聞き取りが苦手であれば、会話中にメモを取る、相手の了承の上で指示内容を労音することで、誤解釈や聞き逃しのリスクを回避しましょう。
    • 予定管理や臨機応変な対応が苦手であれば、優先順位に基づき、やるべきことをリストアップして、目視確認が可能な状況を整えましょう。
    • 1人の時間を作る、運動をして気分転換を図るなど、衝動的な感情が暴れ出さぬよう、自分なりの切り替え方を見出しましょう。
    • 特定のフォントなど、文字の表記スタイルにこだわりがあるのであれば、可能な範囲でより読みやすい・受け入れやすい文字を選択して活用しましょう。
    • 文字を書く作業に障害が見られる場合には、状況に応じて事前に許可を得たうえで、ボイスレコーダーや写真撮影などで記録しましょう。
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    支援機関を活用する 日常生活や仕事上の悩み相談に対応してくれる支援機関を訪れ、環境改善のヒントを得ることが、発達障害の症状の軽減につながる可能性を模索するのも一案です。上記のカウンセリングと同様、悩みを第三者に話すことで、心身の負担を軽減しましょう。ちなみに該当する窓口や支援機関は以下の通りです。最寄りの所在地を確認のうえ、まずは問い合わせてみましょう。[8]
    • 発達障害者支援センター
    • 障害者就業・生活支援センター
    • 障害者職業センター
    • 市区町村の障害福祉窓口
    • ハローワーク
    • 保健所ならびに保健センター
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    精神障害者保健福祉手帳を申請する 国際的診断基準の世界保健機関(WHO)の『国際疾病分類(ICD)』や、アメリカ精神医学会の『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)』においては、発達障害も精神疾患に含まれており、同手帳の申請が可能です。交付された場合には、税金の控除、公共サービス使用料金の割引、障害者雇用枠での就労が認められるなど、複数のサポートが活用できます。ただし必ず交付されるとは限らず、日常生活上の困窮度合いや二次障害の有無など、交付判定基準を満たす必要があります。通常雇用の職場環境での就業では、心身に過剰な負担が避けられない場合の選択肢として、障害者雇用や就労者支援を視野に入れる、この方法も知っておきましょう。[9]
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    自分を受け入れ前向きに生きる ようやく大人の発達障害が正しく受け入れられ始めた今日ですが、一方で誤解や興味本位に取り上げられる場面も、残念ながら少なくないのが現状です。匿名性が極めて強いネット上には、発達障害の有名人を憶測だけで列挙し、根拠のないその理由が綴られているサイトも見られます。言葉の裏を読み取るのが不得手な特徴から、相手が興味本位なのか、本当に自分を理解しようとしてくれているのか、自己判断がつかない場面に遭遇することもあるでしょう。発達障害には「障害」の二文字が含まれていますが、すべての人たちが「負のハンデキャップ」と捉えているわけではなく、少数派であるがゆえの「個性」「特技」と解釈すべきとの意見も見られます。自分自身を受け入れ、過剰に卑下することなく、周囲の人たちの理解とサポートに感謝を忘れず、前向きに人生を歩んでいきましょう。
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ポイント

  • 大人の発達障害はASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如・多動性障害)、LD(学習障害)に分類されます。
  • 大人の発達障害を有する人には、多くの共通した特徴が見られる一方、その症状には個人差も大きく、症状改善を目的とした治療に際しては、対象者それぞれに適した対応が求められます。
  • 完治が期待できる根本的な治療法は確立されていませんが、本人が経験を通じて困りごとの対処法を身につけるなど、治療なしで症状が改善するケースも多数報告されています。
  • 周囲の人たちの理解と協力を仰ぎ、対象者の環境を改善すると同時に、当事者自らも工夫を講じることで、より生きやすい・働きやすい環境の構築に努める対応が大切です。
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注意事項

  • 薬物治療に際しては主治医と十分に相談の上、指示を厳守した正しい服用の徹底が必須です。
  • 近年世の中の理解と認識が進む一方、興味本位で信憑性の薄い関連情報が飛び交っており、周囲の人たちの正しい知識と適切なサポートが望まれます。
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このwikiHow記事について

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カテゴリ: 健康
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