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定性的研究では、この世界についてより深く理解するためのテーマや意味を見出すために、観察・インタビュー・調査・文書などの非構造化データの収集方法を用いて、幅広い分野での調査を行います。[1] 「何を」「どこで」「いつ」といった情報ではなく、行動や態度、動機などの理由を明らかにすることを目指すものです。定性的研究は、社会科学・医療・ビジネスなど様々な分野で取り入れられ、ほぼすべての職場や教育の場でも行われています。

パート 1
パート 1 の 2:

研究の準備をする

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    研究課題を決める 研究課題は明確で、具体的で、扱いやすいものでなければなりません。定性的研究を行う場合は、人々が何かをしたり、何かを信じたりする理由を探るようなテーマを選びましょう。
    • 研究課題の設定は、研究計画の中でも最も重要なものの一つです。一度にすべてのことを調査することはできないため、何を学びたいのか、何を理解したいのかをはっきりさせ、研究の焦点を絞りましょう。設定する課題によって調査方法が異なるため、研究課題を決めることで「どのように」研究を行うかも決まります。
    • どうしても知りたい緊急課題から取り組み、効率よく研究ができる扱いやすい課題に絞り込んでいきましょう。例えば、「教師にとって教師の仕事とは何か」という課題の場合、研究の1テーマとしては幅が広すぎます。ただ、そのテーマに興味があるのであれば、教師のタイプを限定したり、教育の1つの段階に焦点を当てたりすることで、研究課題の範囲を狭めましょう。例えば、「セカンドキャリアとして教師をしている人にとって教師の仕事とは何か?」「中学校の教師にとって教師の仕事とは何か?」などのテーマ設定ができるでしょう。

    ポイント:課題を決める際は、緊急課題と調査可能な課題とのバランスを考えましょう。前者は自分がどうしても知りたいことで、調査もかなり広範にわたることが多いのに対し、後者はすでにある研究方法やツールを使って、すぐに調査を始められます。

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    文献調査をする 文献調査とは、自分の研究課題や特定のテーマについて、他の人が書いた文献を調べるプロセスです。広範な分野について幅広く文献を読み、自分のテーマに関連する研究について調べます。最後に既存の研究についてまとめた、分析レポートを作成しましょう(単に時系列で各研究の短い要約をまとめるだけではありません)。言い換えれば「研究を研究する」プロセスです。
    [2]
    • 「セカンドキャリアとして教師をしている人が、自分の仕事にどのような意味を見出しているか」を研究課題とした場合、「動機は何か?」「こうした教師はどのくらいいるのか?」「こうした教師の多くはどこで働いているのか?」などを、セカンドキャリアとして教師をしている人に関する文献で調べることになるでしょう。このように、既存の文献や研究を読み、見直すことで、自分の課題をより明確にでき、自分の研究のベースとなる知識を得ることもできます。また、自分の研究に影響を与える可能性のある条件(年齢・性別・階級など)や、研究の中で考慮しなければならないことについても知ることができるでしょう。
    • 文献調査を行うことで、自分がそのテーマや研究課題に本当に興味を持って取り組んでいるのか、既存の研究に抜け落ちている点があり、自分で調査を行うことでそれを埋めたいと思っているのかもわかるでしょう。
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    定性的研究が研究課題に適しているかどうかを判断する 定性的研究の手法は、単純に「イエス」「ノー」では疑問の答えが出ない場合に有効です。大抵の場合、定性的研究は「どのように」「何を」という疑問の答えを導き出したいときに行います。[3] また、予算を考慮しなければならない場合にも有効でしょう。

    例えば、研究課題が「セカンドキャリアとして教師をしている人にとって、教師の仕事はどのような意味を持つのか」というものであれば、「イエス」か「ノー」で答えられる疑問ではありません。また唯一無二の包括的な答えもないでしょう。この場合、定性的研究が最適な研究手法であると言えます。

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    最適なサンプルサイズを検討する 定性的研究の手法を用いる場合、定量的調査法を使う場合ほどサンプルサイズは大規模である必要はありません。それでも重要な洞察や発見を得られるはずです。[4] 例えば、米国「全土」で、セカンドキャリアとして教師をしている人「全員」を調査できるような研究資金を得るのが難しい場合、ニューヨークなどの大都市圏や、自分が住んでいる場所から200km以内の学校に絞って調査を行います。
    • 予想される結果について検討しましょう。定性的研究の手法はかなり幅が広く、ほとんどの場合、調査から何らかの有用なデータを得ることができます。これは仮説の立証のために多くの時間を割く、定量的実験とは異なる点です。[5]
    • 研究予算と利用できる財源についても考慮しなくてはいけません。定性的研究の方が低予算で済み、研究計画も立てやすく、実際の研究も進めやすいでしょう。例えば、統計分析ができるコンピュータプログラムを購入し、統計学者を雇うよりも、少数の人を集めてインタビューを行う方が、簡単な上にコストもかかりません。[6]
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    定性的研究の手法を選択する 定性的研究の計画を立てましょう。定性的研究は調査手法の中でも最も自由度が高く、選択できる方法も数多くあります。[7]
    • 「アクション・リサーチ」:差し迫った問題を解決したり、他の人と協力して問題を解決したり、特定の問題に対処することに焦点を当てます。[8]
    • 「エスノグラフィー」:研究対象となるコミュニティに直接参加し、観察することで、コミュニティにおける人間の相互作用を研究する手法です。エスノグラフィー研究は、社会・文化人類学の分野から派生したものですが、今ではより広く利用されるようになっています。[9]
    • 「現象学」:他者の主観的な経験を研究する学問です。他者が自身の経験をどのように解釈しているかを知ることで、他者の目を通して見える世界について調査します。[10]
    • 「グラウンデッド・セオリー」:体系的に収集・分析されたデータに基づいて、理論を展開していきます。具体的な情報を見て、その現象に対する理論や理由を導き出していく手法です。
    • 「ケーススタディリサーチ」:特定の個人や現象について、既存の文脈の中で徹底的に研究します。[11]
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パート 2
パート 2 の 2:

データの収集と分析を行う

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    データを集める どの研究手法を用いる場合でも、インタビュー・参与観察・フィールドワーク・アーカイブ調査・文書資料の調査など、1つまたは複数の手法を用いて経験的データを収集していきます。データ収集の形態は研究手法によって異なるでしょう。例えば、ケーススタディリサーチでは、インタビューや文書資料を用いるのが一般的ですが、エスノグラフィーの場合は、かなりの量のフィールドワークを行う必要があります。[12]
    • 「直接的観察」:状況や研究対象を動画で撮影する方法と、直に観察する方法があります。どんな形であれ、観察対象に影響を与えたり、参加したりすることなく、状況を細かく観察しましょう。[13] 例えば、セカンドキャリアとして教師をしている人たちが、教室の内外でどのように仕事をしているのかを見てみたいという場合、学校や生徒、教師から必要な許可を得た上で、数日間観察しながら詳細な記録を取っていきます。
    • 「参与観察」:研究者が研究対象のコミュニティや環境に入り込む手法です。自分の観察結果が正しいかどうかを知るために、コミュニティにしっかりと参加しなくてはならないため、このタイプのデータ収集はより多くの時間を必要とするでしょう。[14]
    • 「インタビュー」:定性的研究におけるインタビューでは、基本的に、対象者に質問をしてデータを収集していきます。インタビューの形式はかなり自由で、1対1のインタビュー、電話やインターネットを使ったインタビュー、あるいは「フォーカスグループ」と呼ばれる小グループに対するインタビューという場合もあるでしょう。また、インタビューにはさまざまな種類があります。構造化インタビューでは、あらかじめ決められた質問をしますが、非構造化インタビューの場合、インタビュアーがテーマを探りながら、より自由な会話を展開していきます。インタビューは、人々がある事柄に対して、どのように感じたり反応したりするのかを知りたい場合に特に有効です。例えば、セカンドキャリアとして教師をしている人たちに、構造化インタビューや非構造化インタビューを行うことで、彼らが教師としてのキャリアをどのように表現し、どのように議論するかという、非常に有益な情報を得ることができるでしょう。
    • 「アンケート調査」:定性的研究のためのデータを収集する方法として、考えや認識、感想などについて、書面によるアンケートや自由記述式の調査があります。例えば、セカンドキャリアとして教師をしている人を対象とした研究で、一定の地域の100人の教師を対象に、匿名でアンケート調査を行う場合があります。インタビューでは、匿名のアンケートよりも率直さに欠けることが懸念されるためです。
    • 「ドキュメント分析」:研究者自身は直接関与していない、既存の文書、映像、音声などのドキュメントを調査する手法です。文書には、公的機関が作成する「公式」文書・手紙・回想録・日記などの個人的な文書なども含まれます。21世紀に入ってからの資料には、SNSのアカウントやオンラインブログなどもあり、資料の種類も多岐にわたるでしょう。例えば、教育について研究する場合、公立学校のような機関では、レポート・チラシ・ハンドブック・ウェブサイト・カリキュラムなど、さまざまな種類の文書を作成しています。また、セカンドキャリアとして教師をしている人が、オンライン上のグループやブログを運営しているどうかも調べる必要もあるかもしれません。ドキュメント分析は、インタビューなど、他の方法と組み合わせて行いましょう。
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    データを分析する データを収集したら、そのデータを分析して、研究課題に対する答えや理論を考えていきましょう。データを分析する方法はいくつかありますが、定量的研究におけるすべての分析手法は、書面か口頭かにかかわらず、テキスト分析を想定しているものです。[15]
    • 「コーディング」:カテゴリごとに単語、フレーズ、または数字を割り当てます。まず、テーマに関する事前知識から導き出したコードのリストを用意しましょう。例えば、セカンドキャリアとして教師をしている人に関する文献調査によって、「財政問題」や「コミュニティへの参加」という2つのコードが導き出されるかもしれません。次に、すべてのデータを体系的に見て、アイデア、概念、テーマをカテゴリにマッチするよう「コード化」していきます。また、データを読んで分析しながら、新たなコードを作成してもかまいません。例えば、インタビューをコーディングしていく中で、「離婚」というキーワードが頻繁に出てくることに気づいたら、その言葉をコードとして追加しましょう。コーディングによって、データを整理し、パターンや共通点を特定することができます。[16]
    • 「記述統計」:統計を使ってデータを分析します。記述統計によって、データを記述・展開・要約してそのパターンを導き出すことができるでしょう。例えば、教師に対する校長の評価を100件読んだときに、生徒の全体的なパフォーマンスとの関連を調べたいと思うかもしれません。この場合、記述統計を使えばその調査も可能になります。ただし、記述統計は、結論を出したり、仮説を確認または反証したりするためには使用できないので注意しましょう。[17]
    • 「ナラティブ分析」:文法・言葉の使い方・隠喩・話のテーマ・状況の意味・社会的・文化的・政治的な文脈などの観点から、スピーチやコンテンツを分析する手法です。[18]
    • 「解釈的分析」:テキストや口頭で語られた内容の意味に焦点を当てます。基本的には、研究対象の意味を理解し、根底にある、ある種の一貫性を明らかにしようとするものです。[19]
    • 「内容分析」/「記号論的分析」:テキストまたは一連のテキストを確認し、単語の頻度からテーマや意味を導き出します。言い換えれば、言葉や文章の中にある構造やパターン化された規則性を特定し、その規則性に基づいてテーマや意味を推測しようとする手法です。[20] 例えば、セカンドキャリアとして教師をしている人たちへのインタビューで「2度目のチャンス」や「変化をもたらす」など、別々の人が同じ単語やフレーズを使っていたら、この頻度が何を意味しているのかを調べていきます。
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    研究結果をまとめる 定性的研究のレポートを作成する際には、対象読者やレポートを投稿する研究雑誌などのフォーマットのガイドラインを、考慮に入れなくてはいけません。研究課題の目的に説得力を持たせ、研究手法の説明や分析結果についても、詳しく書いていきましょう。
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ポイント

  • 定性的研究と定量的研究の違いを知っておきましょう。それぞれの調査で得られるデータは異なっています。
  • 定性的研究は、統計的・数学的・計算的手法を用いた、より論理的でデータ主導型のアプローチである定量的研究の前段階とみなされている研究手法です。定性的研究は、可能性の高い前提を導き出し、実証可能な仮説を立てるために行うもので、その研究結果を受けて、定量的手法で検証します。[21]
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