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この記事の共著者 : Anthony Stark, EMR. アンソニー・スタークはカナダのブリティッシュコロンビア州在住の認定救急救命士です。救急搬送サービスを提供する会社「British Columbia Ambulance Service」を経て、現在では「Mountain View Safety Services」に勤務しています。ジョージア工科大学にて電気・電子工学および通信工学の学位を取得。
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左腕の痛みの原因は、ごく普通の筋肉痛から重篤な心臓発作まで様々です。左腕の皮膚、軟組織、神経、骨、関節、血管などの異常はすべて痛みの原因になります。左腕の痛みが心臓に関係したものかを判断するにはいくつもの考慮すべき事項があります。
ステップ
パート 1
パート 1 の 3:心臓発作を理解する
パート 1
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1痛みの程度を考慮します。[1] 心臓発作による痛みはほとんどの場合、締め付けられるような痛みや重圧感です。軽度な痛みや、まるで痛みを感じない(無症候性心筋虚血)ものから、痛みの強さを10で表すとすれば10に相当する強烈な痛みまで様々です。痛みは胸部にはじまり、左腕、あご、背中に広がることがあります。
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3心臓発作の症状があったら、救急車(119)を呼びます。[4] 心臓発作かどうか迷っても、万が一のために119に電話をして(できれば固定電話から)救急車を呼び、治療のために病院への救急搬送を依頼します。心臓発作は命に関わるので、1秒すら無駄にすることができない時間との争いです。[5]
- 救急車の到着を待つ間、低用量アスピリン(180mg)を服用すると心臓発作の悪化を軽減することができます。[6] アスピリンには血栓を予防する効果があるので、心臓発作のきっかけとなった冠状動脈(心臓周囲の動脈)の血栓が悪化するのを防ぎます。消化管出血の疾患やアスピリンに対するアレルギーがある場合は、アスピリンを服用してはいけません。
- ニトログリセリンを所持していれば、救急車の到着を待つ間に服用します。[7] ニトログリセリンは胸痛を抑え、病院に得着するまで発作の症状を緩和します。(病院に到着するとモルヒネなどの鎮痛剤を医師から投与されることがあります。)
- バイアグラやレビトラを服用後24時間以内、またシアリスを服用後48時間以内にニトログリセリンを服用すると、深刻な血圧の低下や合併症を引き起こす恐れがあります。上記の時間内にそのような薬を服用していたら、救急隊員や医師にその旨伝えましょう。
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4必要な検査を受けます。[8] 心臓発作の疑いがあれば、的確に診断を下すためには様々な検査を必要とします。心臓の活動を確認するために心電図を使用します。心臓発作だと波形に異常が現れます。さらに、心臓への負荷を表す血液中に流れ出た心筋逸脱酵素の上昇を確認するために血液検査をします。
- 症状や診断のつけやすさ次第で、更に検査を受ける場合もあります。その他の検査としては、心エコー検査、胸部X線検査、血管造影図、運動負荷テストなどがあります。
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パート 2
パート 2 の 3:痛みの程度を認識する
パート 2
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1痛みの長さに注目します。左腕の痛みがごく短いもの(秒単位)であれば、心臓起因のものでない可能性があります。同様に、痛みが長時間(1日や1週間)続くのも、心臓とは関連がないかもしれません。しかし、数分から数時間の痛みは心臓発作の可能性があります。少しの間隔をあけて何度も痛みがある場合は、それぞれの痛みの長さと強度を紙に書き留めて医師の診察を受けるときに持参します。このような痛みも心臓起因の可能性があるので直ちに医師の診察が必要です。
- 胸郭(胸椎部分)の動きによって痛みが治まったり強くなる場合、特に高齢の患者の場合には脊髄の変性椎間板疾患の可能性があります。このような痛みは心臓に起因するものではありません。
- 同様に、痛みが腕を使った激しい運動の後に生じた場合は、筋肉に起因する可能性が高いでしょう。生活習慣を振り返って、何が痛みを悪化させるのか考えてみましょう。
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3他の症状に注目します。左腕の痛みに加えて、別の場所に痛みがあるか確認します。これは左腕の痛みが心臓起因のものなのか(そして深刻か)を知るのに適切な方法のひとつです。心臓発作は通常下記のような症状を伴います。 [13]
- 突然耐えられないような胸部の痛みとそこから広がる放散痛の左腕の痛み。両腕に痛みが生じる場合もありますが、通常は心臓に近いため左腕が痛みます。
- あご、通常は下あごに痛みと締め付けられるような感じ。片方だけのこともあれば両方に感じることもあり、ひどい歯痛に似た痛み。
- 肩への放散痛(肩や胸の部分の圧迫や重圧感)。
- 胸部、あご、首、腕の痛みによる背中の鈍痛。
- 深刻な痛みを感じない心臓発作もあるので注意が必要です。
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パート 3
パート 3 の 3:心臓起因ではない場合の原因を考える
パート 3
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1首の動きに伴う痛みに注目します。[14] 痛みが首や背中の上部を動かすと悪化する場合、頚椎症の可能性があります。左腕の痛みの原因の最も多いもののひとつです。65歳以上の90%以上の人に頚椎症の症状があります。頚椎症とは、加齢による脊椎(特に首の周辺)の椎間板の摩耗の総称です。椎間板が水分を失い縮むと頚椎症が起こります。摩耗が進むので加齢とともに症状が悪化する傾向にあります。
- 首と脊椎上部を動かすと痛みの原因がわかります。動かすと痛みが増す場合は、頚椎症の可能性があります。
- 心臓発作の痛みは、動かしたり脊椎や首を押して悪化したり治まるものではありません。動きや圧力で痛みが悪化し、他の症状がなければおそらく頚椎症でしょう。しかし、頚椎症も深刻な疾患ですから医師の診察が必要です。
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2肩を動かしたときに生じる痛みを考えます。[15] 肩を動かしたときに腕の痛みが悪化する場合は、肩の関節炎の可能性があります。心臓発作かもしれないと恐れて救急診療に訪れる患者の多くが、実はこの関節炎を発症しています。関節炎は骨を滑らかに動かす外側の覆い(軟骨)が損傷したことで起こる疾患です。軟骨がなくなると、骨の間を保護する部分が減るので、動かすと骨同士がぶつかって肩の痛みや左腕の痛みが生じます。
- 肩関節炎の決定的な治療法は存在しませんが、痛みを緩和する方法は多くあります。肩の関節炎を発症しても心配は無用です。深刻な疾患のように感じますが、悪化を防ぐ方法があります。
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3神経損傷の症状に注意します。腕が機能しない場合は、神経の損傷が原因かもしれません。[16] 腕の神経は首の下方で脊髄から分岐し、神経束(腕神経叢)を形成します。この神経束が枝分かれして腕の神経になります。肩から手にかけての腕の神経の損傷は様々な痛みを生じますが、通常は、腕の機能の喪失(例えば、麻痺やチクチクするような感覚、可動域の減少)を伴います。腕の痛みは神経の損傷によるもので、心臓との関連はないかもしれません。
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4血圧と心拍数を確認します。異常があれば末梢動脈疾患の可能性があります。これはアテローム性動脈硬化症によるもので、喫煙者に多い疾患です。[17]
- 病院で血圧と心拍数を確認すると末梢動脈疾患かどうかがわかります。
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5腕の痛みを伴うそのほかの疾患を考えます。[18] 最近受けた損傷があったか思い出しましょう。左腕の痛みは最近の腕や肩の外傷に起因しているかもしれません。左腕の痛みが今もあって、これといった原因が思い浮かばなければ医師の診察を受けましょう。
- 左腕の痛みが急に生じ、同時に汗や方向感覚の喪失、他の部位の痛みがあれば直ちに医師の診察を受け、生命にかかわる状態か診断してもらいます。
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出典
- ↑ https://www.nlm.nih.gov/medlineplus/heartattack.html
- ↑ https://www.nlm.nih.gov/medlineplus/heartattack.html
- ↑ http://www.heart.org/HEARTORG/Conditions/HeartAttack/WarningSignsofaHeartAttack/Warning-Signs-of-a-Heart-Attack_UCM_002039_Article.jsp
- ↑ https://www.nlm.nih.gov/medlineplus/heartattack.html
- ↑ http://www.hopkinsmedicine.org/heart_vascular_institute/conditions_treatments/conditions/myocardial_infarction.html
- ↑ http://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/heart-attack/basics/symptoms/con-20019520
- ↑ http://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/heart-attack/basics/symptoms/con-20019520
- ↑ http://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/heart-attack/basics/tests-diagnosis/con-20019520
- ↑ https://www.nlm.nih.gov/medlineplus/angina.html
- ↑ http://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/angina/basics/definition/con-20031194
- ↑ http://www.hopkinsmedicine.org/healthlibrary/conditions/cardiovascular_diseases/angina_pectoris_85,P00194/
- ↑ http://www.hopkinsmedicine.org/healthlibrary/conditions/cardiovascular_diseases/angina_pectoris_85,P00194/
- ↑ http://www.heart.org/HEARTORG/Conditions/HeartAttack/SymptomsDiagnosisofHeartAttack/Symptoms-and-Diagnosis-of-Heart-Attack_UCM_002041_Article.jsp
- ↑ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3113270/
- ↑ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3113270/
- ↑ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3113270/
- ↑ http://www.webmd.com/heart-disease/guide/heart-disease-overview-facts
- ↑ http://www.mayoclinic.org/symptoms/arm-pain/basics/causes/sym-20050870
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