遺言状を書く方法

遺産に関するトラブルは年々増えています。例えば家庭裁判所が取り扱った遺産分割事件数の推移を見ると、その件数は2009年が10,741件で、2018年には13,040件まで増えています。[1] これは、裁判所を利用するほど、遺産が家族の間で問題になるということを表しています。誰もが自分が死んだあとに大切な家族がいがみ合う姿は見たくないはずです。それに自分の財産ですから、自分の意思のもとに分配したいという人もいるでしょう。遺言状を残すことは、そのような問題の解決に役立ちます。ただ、遺言状は法律に則ったものではないと認められないこともあり、それではせっかく書いても意味がありません。そこで、今回は適切な遺言状の書き方を紹介します。

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遺言状を知る

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    遺言状の基本を知る 遺言状を書く前に、まずは遺言状とはどのようなものか、あらためて確認しましょう。遺言とは自分の死後のために遺す言葉や文章で、それを記したものを遺書といいます。それに対して、とくに遺産の分与方法などを記した、法的に効力をもつ書類を遺言状といいます。
    • 基本的に遺言状と遺言書は同じものを指します。
    • 一般的に遺言は「ゆいごん」と読みますが、法律上の効力がある遺言については「いごん」と読みます。
    • 遺言状に書くことで法的に効果がある内容には、誰にどんな割合で相続させるかといった遺産に関すること、内縁関係で生まれた子どもを自分の子どもとして認めるなどの身分に関すること、自分の死後に遺言状にしたがって手続をする執行者を指定するなどの遺言の実現に関することなどがあります。[2]
    • 一般的に遺書は自殺者や死を覚悟した人が残す手紙で、内容はプライベートに関することとされています。遺書は法律的な効力を求められていないので、決まった書き方はありません。一方、遺言状は自分の死が迫っていることを自覚していなくても書かれることがあり、内容は主に遺産の分与方法などになりますが、そのなかに遺書のようにプライベートに関することが含まれることもあります。[3]
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    遺言状の種類を知る ひと口に遺言状といっても書くときの状況や保管の方法などによって、いくつかの種類があります。大きくは普通方式と特別方式にわけられます。特別方式は、事故や災害などによって自分の身に危険が迫っているときのもので、一般的には普通方式で書きます。[4]
    • 普通方式には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という三つのタイプがあります。
      • 自筆証書遺言は筆記用具と紙で遺言書を作成します。
      • 公正証書遺言は2人の証人の立ち会いのもと、専門家である公証人が依頼者から話を聞いて作成します。完成した遺言状は公正証書として公証役場で保管してもらうことになります。
      • 秘密証書遺言は自分で用意した遺言書を2人の証人と同行して公正役場に持ち込み、遺言書の存在を保証してもらう形式です。
    • 特別方式には特別方式遺言、緊急時遺言、隔絶地遺言があり、さらに緊急時遺言には一般臨終遺言と難船臨終遺言、隔絶地遺言には一般隔絶地遺言と船舶隔絶地遺言があります。
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    遺言状の種類を選ぶ 特別方式の遺言状は緊急時に記すものです。また、秘密証書遺言は自分で保管しなければならず、紛失などのデメリットがあり、多くの場合、自筆証書遺言か公正証書遺言が用いられます。特別な事情がないのであれば、どちらかを選ぶとよいでしょう。
    • 自筆証書遺言には、費用がかからない、書き方が簡単である、遺言の存在を秘密にできるなどのメリットがあります。ただし、書いてある内容の不備のために遺言が無効になるおそれがある、偽造されるおそれがある、遺言書が発見されないおそれがあるなどのデメリットがあります。[5]
    • 正証書遺言には、専門家に依頼するので内容や書き方を間違える心配がなく、作成時に自分が気が付かなかったことも指摘してもらえる、偽造を防げる、自分で筆記ができなくても遺言状が書けるなどのメリットがあります。ただし、費用がかかる、証人を用意しなくてはいけないなどのデメリットがあります。
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自筆証書遺言状を書く

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    筆証書遺言状の特徴を知る 自筆証書遺言状は第三者による偽造を防ぐために本人が手書きで書くことが原則です。作成時には自分が所有しているすべての財産をまとめた財産目録を作成すると、スムーズに遺言状を書くことができます。[6]
    • 2019年より自筆証書遺言に関する法律が変わり、財産目録はパソコンで作成したものでも認められるようになりました。[7]
    • 自筆証書遺言状は相続をしたい人が亡くなったあとに検認が必要です。検認とは遺言状の発見者や保管者が家庭裁判所に遺言状を提出し、相続人などの立会いのもとで遺言状の内容を確認することです。この検認のために遺言状内容が執行されるまで、一定の期間(通常は1~2カ月くらい)を要します。
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    遺言状を書く準備をする 使用する用紙については便箋を用いるのが一般的で、レポート用紙などの他の用紙でも問題はありません。また、筆記用具については消えないように鉛筆以外の万年筆やボールペンを使用します。
    • 押印が必要なので印鑑も用意します。法律上は実印である必要はありませんが、一般的には実印が望ましいとされています。
    • 不動産を相続する場合は登記簿通りに書く必要があります。事前に登記簿を取り寄せておきましょう。
    • 実際の作成に取り掛かる前に、あらためて自分が所有している財産を確認し、その財産を相続する相手と割合を決めておきましょう。いきなり正式なものを書こうとすると、うまくまとめられない可能性が高くなります。
    • 遺言状用の用紙や封筒がセットになっている遺言状キットも市販されています。[8]
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    自筆証書遺言状を書く 遺言状は法律用語や難しい言葉を使う必要はありません。書かなくてはいけない事項は定められていますが、それを「このように書かなくてはいけない」という決まったフォーマットはありません。読みやすい文字で、具体的かつ正確に書くことが重要です。
    • 一般的には、まず表題を記します。(例:遺言状)。
    • 次に自分の名前と遺言する旨を書きます。(例:遺言者 佐藤○男は次の通り遺言する)
    • 次に相続したい相手の氏名とその人に相続する旨(例:妻 佐藤○子に次の財産を相続させる)を書き、続いて相続する具体的な財産を書きます。(例:土地 ○○県○○市○○○1丁目1番地1)
    • 次に該当相手に応じて、同じように相手の氏名とその人に相続する旨、具体的な財産を書きます。
      • 相続する財産が不動産の場合は土地と建物をわけて物件を特定できるようにします。また、内容は登記簿謄に記載されているとおりに書かなくていけません。
      • 相続する財産が金融機関の預貯金である場合は金額(預貯金に対しての割合)、金融機関名と口座番号を書きます。
    • 次に付け加えたいことがあれば付言事項として、その内容を書きます。(例:付言事項 釣り用具は興味がある人が相続してください)
    • 次に書いた日の日付を書きます。
    • 最後に住所と名前を書き、押印します。
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    封筒に入れて保管する 書いた遺言状を封筒に入れて保管します。封筒の裏面には、間違って開けてしまうことを防ぐため、「本遺言状は私の死後、開封せずに家庭裁判所で検認を受けてください」と書いておくとよいでしょう。
    • 保管場所は自宅が手軽ですが、紛失するおそれや死後に気づかれない可能性があるので注意が必要です。
    • 2020年7月より法務局でも自筆証書遺言書を保管するサービスがスタートします。[9]
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公正証書遺言状を作成する

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    公正証書遺言状の特徴を知る 公正証書遺言状は公証役場で公証人が記し、原本と写しである正本・謄本の3通が作成されます。正本と謄本が遺言者に渡され、原本は公証役場に保管されます。ですので、捏造や紛失、内容の不備によって遺言が無効になる心配がありません。
    • 公正証書遺言状を作成する公証役場の場所はインターネットで調べることができます。[10]
    • 公正証書遺言状の作成には、自分が公証役場に出向いて相談・委託をする方法と、弁護士や司法書士などの専門家に依頼する方法があります。
    • 専門家に依頼すると費用がかかりますが相続税の申告が必要かなどの判断もしてもらえます。
    • 公正証書遺言状の作成には、手続きをする公証役場に対しての費用が発生します。金額は相続したい金額などによって異なり、例えば、それが100万円以下の場合は5,000円です。[11]
    • 公正証書遺言状は自筆証書遺言状とは異なり、検認手続きが不要なので、相続したい人の死亡後すぐに執行できます。
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    作成の準備をする 公正証書の作成には印鑑証明や戸籍謄本などの書類が必要なので、その準備が必要です。また、この方法は公証役場の公証人の前で遺言の内容を読み上げて作成しますが、その際に立ち合ってもらう2人以上の証人を選ぶ必要もあります。
    • 専門家に依頼する場合は、まず続人の状況、財産の内容、遺言書作成の目的などを説明します。なお、依頼すると準備する書類についてもアドバイスをもらえます。
    • 準備する書類は自分の印鑑登録証明書と実印、戸籍謄本、固定資産評価証明(または固定資産税の納付書の写し)、不動産の登記簿謄本、預金・株式・有価証券などの動産の残高の概算メモ、証人予定者の住民票です。
    • 第三者に遺贈する場合は、その相手の住民票も必要です。
    • 証人について、相続する予定の相手や未成年者などは証人になることができません。一般的には親しい友人などが選ばれることが多く、その他には有料で司法書士や弁護士などの専門家に依頼する方法や公証人役場で証人を準備してもらう方法があります(専門家に依頼する場合は、その専門家も証人に選べます)。
    • 実際の作成に取り掛かる前に、あらためて自分が所有している財産を確認し、その財産を相続する相手と割合を決めておきましょう。
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    公証人と事前の打ち合わせをする 公正証書遺言状を作成するのは公証人ですが、いきなり公証人役場に行っても、その場で遺言書を作成してもらえません。遺言状を作成する当日に向けて、事前に担当してくれる公証人と打ち合わせをします。[12]
    • 専門家に依頼すると、ほとんどの場合、公証人との打ち合わせは専門家が請け負ってくれます。
    • 公証人との打ち合わせでは、相続したい相手や相続の内容、証人の準備、遺言作成などを相談します。
    • 打ち合わせの回数や内容は公証人によっても異なりますが、平均で1~2回のことが多いようです。[13]
    • 打ち合わせの最後に公正証書遺言状を作成する日時を公証人と相談して決めます。
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    公正証書遺言状を作成する 証人2人以上の立ちあいのもと、遺言状を遺したい人が遺言内容を口述し、それを公証人が筆記するというかたちで公正証書遺言状を作成します。その後、公証人が証書の内容を遺言者と証人の前で読み上げ、遺言者と証人が署名・押印します。そして、公証人が署名・押印し、証書が方式にしたがって作成されたものであると付記したら完成となります。
    • 公正証書遺言は原本と写しである正本、謄本の3通が作成されます。原本は公証役場にて保管、正本と謄本が遺言者に渡されます。
    • 最後に公証人手数料を支払います。
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その他の遺言状を書く

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    秘密証書遺言状を書く 秘密証書遺言状は遺言の内容を誰にも公開しないで、公証役場の公証人に遺言の存在だけを証明してもらう遺言状です。遺言状を作成したら封筒に入れて封印し、公証人と証人2人以上の前で封筒を提出します。そして、自己の遺言であることと氏名・住所を申述し、公証人が提出された日付などを封筒に記載、最後に遺言状の制作者本人・公証人・証人が封筒に署名・押印します。[14]
    • 秘密証書遺言状は公証役場に対して費用が発生します(11,000円)。また、内容を第三者が確認することがないので表記方法に誤りがある可能性もあることなどから、自筆証書遺言状や公正証書遺言状ほど一般的ではありません。
    • 書き方は自筆証書遺言状に準ずるとよいでしょう。なお、秘密証書遺言状は自筆証書遺言状とは違って手書きである必要はなく、パソコンで作成することもできます。
    • 相続をしたい人の死亡後は自筆証書遺言と同じように検認が必要です。
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    緊急時遺言状を書く 緊急時遺言状には一般臨終遺言状と難船臨終遺言状があります。一般臨終遺言状とは病気や事故などの緊急事態、難船臨終遺言とは乗船している船舶や航空機が遭難したときなどに認められる遺言状です。
    • 一般臨終遺言状には3人以上の証人が必要です。人数がそろったら、遺言を遺したい人は、そのうちの1人に遺言の趣旨を口授します。口授を受けた証人は遺言の趣旨を筆記し、筆記が終わったら、その内容を読み上げたり、閲覧させたりするなどして、間違いがないことを確認します。内容が正しければ、筆記した紙に証人全員の署名・押印をします。[15]
    • 一般危急時遺言状に法律上の効力を発生させるためには、家庭裁判所の確認が必要です。遺言のあった日から20日以内に、証人の1人または利害関係者は家庭裁判所に内容確認の請求を行います。また、遺言を遺したい人が死亡したら、再び家庭裁判所に出向いて、検認手続きを受ける必要があります。
    • 難船臨終遺言状には2名以上の証人が必要です。証人は遺言を遺したい人の口授を受けて遺言の趣旨を筆記し、署名・押印をします。一般危急時遺言と同様に、効力の発生には家庭裁判所での内容確認、検認手続きが必要です。
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    隔絶地遺言状を書く 隔絶地遺言状には一般隔絶地遺言状と船舶隔絶地遺言状があります。一般隔絶地遺言状とは伝染病にかかって病院に隔離されている場合など、一般社会から離れた場所にいる場合に認められる遺言状で、船舶隔絶地遺言は船舶に乗船している際に作成する遺言状です。
    • 一般隔絶地遺言状は警察官1名と1名以上の証人が必要です。遺言状は遺言を遺したい人が作成し、遺言状の作成に関わったすべての人が署名・押印をします。家庭裁判所での内容確認は不要で、検認手続きは必要です。
    • 船舶隔絶地遺言状は船長、または事務員1名と2人以上の証人が必要です。遺言状は遺言を遺したい人が作成し、遺言状の作成に関わった、すべての人が署名・押印をします。家庭裁判所での内容確認は不要で、検認手続きは必要です。
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ポイント

  • 遺言状に感謝の気持ちなどを記してあっても、それが理由で遺言状のすべての文面が無効になることはありません。
  • 遺言状には、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言、④一般臨終遺言、⑤難船臨終遺言、⑥一般隔絶地遺言、⑦船舶隔絶地遺言という7種類があり、一般的に事前に財産の分与を明確にしておきたい場合に用いられるのは、①自筆証書遺言、②公正証書遺言です。
  • 公正証書遺言状は基本的には公証人役場で作成しますが、体調不良や歩行困難などの理由があれば、自宅や病院へ公証人が出張してくれます。

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注意事項

  • 録音したものは遺言状として認められません。
  • 自筆証書遺言状(自分で書く遺言状)は正しい書き方でないと、遺言状として認められないことがあるので注意が必要です。とくに注意したい条件には、全文を自分で手書きをする、作成年月日と氏名は略さずに正確に書く、押印をするなどがあります。
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このwikiHow記事について

wikiHowは「ウィキ」サイトの一つであり、記事の多くは複数の著者によって共著されています。 この記事は、著者の皆さんがボランティアで執筆・推敲を行い、時間をかけて編集されました。
カテゴリ: 家族 | 資金管理
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