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PTSD (心的外傷後ストレス性障害) は、危険や恐怖を伴う出来事に耐え抜いた後に経験する心理的な疾病です。実際の出来事そのものは、身体に備わった「自動操縦モード」や「闘争・逃走反応」によって何とか切り抜けることができたかもしれません。しかし、PTSDを発症すると「闘争・逃走反応」がその後も治まらず、患者は危険に遭遇した時の心身への影響を長期にわたって受け続けます。自分や周りの人にPTSDの疑いがあると思う場合は、以下を読んでその主な兆候について学びましょう。

方法 1
方法 1 の 3:
PTSDである可能性を探る

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    PTSDとは何か PTSD (心的外傷後ストレス性障害) は、命が脅かされる恐怖を経験をした後に発症する精神疾患です。トラウマ (心的外傷) となる状況の後で、混乱、悲しみ、苛立ち、無力感、後悔などの様々な悲観的・否定的な感情を持つことは極めて正常です。これは人がトラウマとなる出来事に遭遇した時に経験する、正常な心理的反応です。しかし、通常はこういった感情は時間と共に薄れていきます。PTSDを発症するとつらい心的反応は消失せず、むしろ深刻化します。[1]
    • 一般的に、PTSDは生命を脅かす程の恐ろしい出来事を経験した後に起こります。トラウマに直面する時間が長いほど、PTSDを発症する確率が高くなります。
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    戦争に行かなくてもPTSDは発病する PTSDは戦場からの帰還兵と関連して語られることが多いため、「自分は戦争に参加していないからPTSDではない」と考える人がいます。しかし、戦闘に参加しなくても、トラウマとなる恐ろしい経験をした場合にはPTSDを発症する可能性があります。さらに言えば、PTSDは生命を脅かすような出来事を実際に経験した人だけに起こるものではありません。恐ろしい出来事を目撃したり、事件や事故の後処理を経験しただけでもPTSDを発症することがあります。[2]
    • PTSDの原因となる一般的な出来事には、性的暴行、武器による脅迫、自然災害、愛する者との突然の死別、車や飛行機の事故、拷問、戦闘、殺人の目撃などがあります。
    • 特筆すべきは、自然災害ではなく、人為的な事件・事故によってPTSDを発症した人が大多数であるという点です。
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    トラウマを経験してからの期間を特定する 上述した通り、恐ろしい出来事を経験した後に強い悲観的・否定的な感情を持つのは正常な反応です。恐ろしい経験の後、最初の数週間以内に表れる症状は急性ストレス性障害と呼ばれます。それでも、基本的に1か月程度で悲観的な感情は薄れ始めます。1か月以上経過してからこういった感情が強くなる場合には、PTSDが疑われます。[3]
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    PTSDの危険要因について知る 二人の人が全く同じ経験をしても、PTSDを発症する人とそうでない人に分かれるのは不思議なことです。トラウマとなる経験をした時に、人がPTSDを発症する危険性を高める要因はいくつかあります。ただし、たとえ危険要因があっても、すべての人がPTSDを発症するわけではないことを覚えておきましょう。PTSD発症の危険要素は以下の通りです。[4]
    • 家族に精神疾患の病歴がある場合:不安障害やうつ病を患った家族がいると、PTSDを発症する危険性が高まります。
    • ストレス反応の個人差:ストレスは正常なものですが、人によっては体内に分泌される化学物質やホルモン量の過多により、ストレスに対して異常な反応を起こす場合があります。
    • 過去の経験:子供の頃に虐待やネグレクトなどのトラウマを経験していると、過去に感じた恐怖に新しいトラウマの恐怖が追加され、PTSDを発症することがあります。
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方法 2
方法 2 の 3:
PTSDの症状を見つける

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    回避傾向を認識する トラウマとなる出来事を経験すると、人はそのことを想起させる物事を避けようとすることがあります。本来、トラウマと向き合うにはつらい記憶と真っ向から対決することが最も健全な方法ですが、PTSDを発症した人は、過去に経験したつらい出来事に関連する物事を意図的に避けるようになります。この回避傾向と呼ばれる症状は以下の通りです。[5]
    • トラウマとなった出来事について考えないようにする
    • その出来事を想起させる人、場所、ものを避ける
    • その出来事について話すことを避ける 
    • つらい出来事について考えないように娯楽に没頭し、その事で頭をいっぱいにする
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    侵入性回想に注意する 侵入性回想とは、自分の意思にかかわらず突然頭に浮かぶ記憶です。発症すると、自分は無力で、自分ではこういった回想を止められないと感じます。侵入性回想の症状は以下の通りです。[6]
    • トラウマとなった出来事の突然で鮮明なフラッシュバック (追体験)
    • その出来事についての悪夢
    • 「スライドショー」のように勝手に頭に浮かぶその出来事の映像
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    つらい出来事が起こったことを認めたくない気持ちに注意する PTSDを持つ人は、トラウマとなった出来事が起こったこと自体を否定することがあります。そうした人たちは全く通常通りに、自分の人生が何者にも邪魔されていないかのように行動するでしょう。これはショック状態の一種で、自衛本能によるものです。身体を苦痛から守るために、脳がつらい記憶とそれに伴う意味を閉じ込めてしまいます。[7]
    • 例えば、赤ちゃんを亡くした母親がその事実を受け入れられずに、まるで赤ちゃんが眠っているかのように話しかけ続けるといった場合、これを否認と言います。
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    考え方の変化に注意する 人の考え方は常に変わるものです。しかし、PTSDを発症すると、人や場所、物事について、トラウマとなる出来事以前には決してしなかった考え方を突然するようになります。こういった考え方の変化の例は以下の通りです。[8]
    • 人、場所、状況や自分自身についての悲観的・否定的な考え 
    • 将来に対する絶望や無関心
    • 幸福感や楽しさの喪失 (感覚鈍麻) 
    • 人間関係の継続が非常に困難、あるいは不可能
    • トラウマとなった出来事についての詳細を忘れる、記憶のかい離などの記憶障害
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    トラウマ経験後の感情・身体的な変化に注意する 考え方の変化と同様に、トラウマとなった出来事の前には経験したことのない感情的・身体的な変化に気を付けましょう。こういった変化が時々起こることがあることをよく覚えておきましょう。また、こういった症状が繰り返し表れる場合は要注意です。こういった変化には以下のものがあります。[9]
    • 眠れない (不眠症) 
    • 食欲が減退する 
    • 些細なことで怒り、イライラして攻撃的になる 
    • 以前は熱中していたことを楽しめない 
    • 打ちのめされるほどに強く罪や恥の意識を感じる 
    • スピード運転、薬物の乱用、軽率あるいは危険な行為などの自己破滅的な行動をとる
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    過覚醒症状に注意する トラウマになるような恐ろしい出来事の後には、著しく神経質 (神経過敏) になることがあり、普段なら全く怖くないことでパニックを起こします。これは、トラウマとなる出来事によって身体が「警戒が必要だ」と考え、実際には不必要な過覚醒状態になるためです。[10]
    • 例えば、すぐ近くで爆弾が爆発した経験をした人は、だれかがカギを落とした音やドアが閉まる音に驚いて飛び上がったり、パニックを起こしたりするでしょう。
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    PTSDの治療経験がある精神衛生の専門家に相談する 臨床心理士や心理療法士に相談すると、自分の症状がトラウマとなった出来事に対する自然な反応か、PTSDの発症によるものかがわかります。さらに、患者に最適な治療法を治療者が判断します。PTSDの治療法は以下の通りです。[11]
    • 従来のカウンセリングはPTSDの症状だけでなく、その結果として生じた家族、生活、仕事に関する問題に効果があると実証されています。
    • 心理セラピーでは、トラウマとなった出来事について少しずつ話をする、それ以降避けてきた場所や人を訪ねるといった疑似体験療法 (暴露療法) や、ストレスや不安を誘発する物事に対処する健全な技術を身につけるストレス免疫訓練を行います。
    • 精神科医は抑うつ、不安、睡眠障害を緩和する薬剤を処方する場合があります。
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方法 3
方法 3 の 3:
PTSDの関連症状を探す

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    抑うつの兆候に注意する トラウマとなる経験を乗り越えて生きていく上で、多くの人が抑うつ症状を経験します。自分がPTSDだと思う人は、抑うつ症状も経験しているかもしれません。以下のような症状に気を付けましょう。[12]
    • 集中力が低下する 
    • 罪悪感、無力感、無価値観を覚える 
    • 体力低下や好きなことに対する興味の喪失を覚える 
    • 癒えることがないような深い悲しみや虚しさを感じる 
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    不安感に注意する ぞっとするような恐ろしい経験をすると、不安症状を発症することがあります。不安症状は、日常生活で人が経験する通常のストレスや心配などよりも強力なものです。不安障害の兆候は以下の通りです。[13]
    • 常に心配で、問題の大小にかかわらず心配事が頭から離れない
    • 気持ちが落ち着かない、リラックスしたい気持ちがない
    • 緊張や神経過敏で、ささいなことでびくっとする
    • 睡眠に問題がある、もしくは休憩ができない 
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    強迫的な行動に注意する 自分の全世界を破壊されるような経験をすると、人は何とかして正常な生活に戻ろうとします。しかし、過剰に自分の環境をコントロールしすぎて、正常な状態を超えてしまう人もいます。強迫神経症には様々な症状がありますが、発症が疑われる場合は以下の症状の有無を確認しましょう。[14]
    • 常に手を洗いたい欲求を覚えます。手が汚れている、とにかく汚染されたと感じて被害妄想的になります。
    • 物事がきちんとしているかを取りつかれたように調べます。例えば、オーブンの電源を切ったか、ドアの鍵を閉めたかを10回も確認します。 
    • ものの対称性に突然取りつかれます。気付くとものを数えたり、ものを左右対称で均等になるように並べ替えたりします。 
    • 物を捨てられなくなり、捨てると何か悪いことが起こりそうな気がします。 
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    幻覚があるときは人に相談する 幻覚とは実在しないものを五感のひとつで体験する感覚です。例えば本物ではない声が聞こえる、実際にはそこにないものが見える、実在しないものの匂いや味を感じる、実際には触られていないのに何かに触られた感覚がある、といった症状です。こういった幻覚のある人には幻覚と現実を区別することが困難です。[15]
    • 自分が幻覚を経験しているかを確認するには、周りにいる人に同じ感覚があるかを尋ねてみましょう。[16]
    • 幻覚はPTSD以外の未発見の精神疾患 (統合失調症など) の兆候の可能性があるため、気を付けましょう。統合失調症とPTSDは併存する確率が高いという研究結果があります。[17] 実在しないものを見たり、聞いたりしたらすぐに助けを求めることが重要です。
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    記憶喪失を疑ったら医師に相談する トラウマとなる出来事を経験すると、苦痛から心身を守るために脳がその記憶を閉じ込めてしまいます。また、実際に起こったことを否認したり、抑圧することで記憶が喪失することがあります。生活の細かいことが突然、はっきりわからなくなったり、記憶から抜け落ちた時間があると感じたら、心理療法士や信頼できる人に相談しましょう。[18]
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ポイント

  • 信頼できる人に、自分の経験した恐ろしい出来事について話してみましょう。自分の経験を話すことが、その出来事に起因するつらい感情や悲観的な感情を拭い去る助けになります。


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注意事項

  • PTSDかもしれないと思ったら、直ちに精神医療者の助けを求めましょう。


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出典

  1. Collins, C., Vaegue, H., Personality Disorders, 2007.
  2. Frueh, C., Rosen, M., Wiley, J., Clinician's Guide to Posttraumatic Stress Disorder, 2010.
  3. Whitman, B., A Prospective Study of the Timing of PTSD Symptoms: Implications for Criterion C as an Early Indicator of PTSD., 2008.
  4. Frueh, C., Rosen, M., Wiley, J., Clinician's Guide to Posttraumatic Stress Disorder, 2010.
  5. Frueh, C., Rosen, M., Wiley, J., Clinician's Guide to Posttraumatic Stress Disorder, 2010.
  6. Collins, C., Vaegue, H., Personality Disorders, 2007.
  7. http://psychcentral.com/lib/symptoms-and-diagnosis-of-ptsd/000158
  8. Frueh, C., Rosen, M., Wiley, J., Clinician's Guide to Posttraumatic Stress Disorder, 2010.
  9. Whitman, B., A Prospective Study of the Timing of PTSD Symptoms: Implications for Criterion C as an Early Indicator of PTSD., 2008.

このwikiHow記事について

George Sachs, PsyD
共著者 ::
認定心理学者
この記事の共著者 : George Sachs, PsyD. 認定心理学者のジョージ・サチスはニューヨーク州ニューヨーク市にあるクリニック「Sachs Center」の経営者です。小児、10代、成人を対象とした経験注意欠陥・多動性障害、自閉症スペクトラム障害の治療を専門とし、経験は10年以上。エモリー大学にて心理学の学士号を、シカゴのイリノイ心理専門大学にて心理学の博士号取得。同市のクック郡立病院、マウントサイナイ病院、児童研究センターにて臨床研修を修了後、ロサンゼルスのチルドレンズ・インスティチュートにて、TFCBT(トラウマに焦点を当てた認知行動療法)トレーニングプログラムの講師及び監督役を務めると同時に、インターンシップと博士研究課程を修了。ロサンゼルスのゲシュタルト療法トレーグ協会にてゲシュタルト療法を学び、認定資格を取得。NBC Nightly News、CBS、WPIXに出演し、ホリスティックな視点に立脚した注意欠陥・多動性障害の治療法を論じました。注意欠陥・多動性障害患者との付き合い方を説いた本「大人の注意欠陥症対策」「トラウマを抱えた子供を救う方法」「注意欠陥症の夫をサポートする方法」の著者で、ハフィントン・ポストのライターとしても活躍。 この記事は3,730回アクセスされました。
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